Low-Power Radio Research & Applications Laboratory LoPRA Labは、免許不要・小電力無線通信に関する制度・文化・技術の記録と実験を行う独立系の市民科学研究室です
私たちは今、遠く離れた人と顔を見ながら話し、世界各地の出来事を動画で知り、何千枚もの写真を短い時間で送ることができる。 こうした通信を支えている技術の一つが、「帯域幅」である。 通信の歴史を振り返ると、人間が伝えようとするものは、文字から声へ、写真へ、そして動く映像へと豊かになってきた。 最初は、遠くにいる人へ短い言葉を届けることが大きな目標だった。やがて相手の声を聞きたいと願い、顔を見たい...
はじめに――たくさんのチャンネルがあるのに、なぜ一つに集まるのか 無線機に30も50もチャンネルがあるなら、利用者は空いているチャンネルを自由に選んで話せばよいように思われる。 実際、あらかじめ通信相手が決まっている場合には、それで足りることが多い。 店舗の従業員、工事現場の作業員、催事の運営スタッフなどは、活動を始める前に使用するチャンネルを決めておけばよい。全員が同じチャンネルを受信して...
航空航法の技術史から考える、法と社会と安全の変遷 はじめに――空から聞こえてきたモールス符号 かつて、航空機の操縦席には、地上の無線局が発するモールス符号を聞きながら飛ぶ時代があった。 短い音と長い音が繰り返される。操縦士は、その組合せによって、受信している電波がどの無線標識から発せられたものかを確かめる。そして、計器の針が示す方向を見ながら、地上の施設へと機首を向ける。 その仕組みを支えて...
委任立法の歴史から考える、電波法、技術標準、専門知識と民主主義の関係 無線機の内部には、法律がある。 もちろん、基板の上に六法全書が載っているわけではない。送信周波数の許容偏差、不要な電波の放射、送信電力の制限、隣接する通信への妨害を防ぐための条件などが、法令によって規律されているという意味である。 ところが、こうした技術上の条件を詳しく調べようとして電波法を開いても、期待した数値や測定方法...
はじめに――外国の声を聴くことにも許可が必要だった 古い短波ラジオの同調つまみを回す。 雑音の向こうから、遠い外国の放送局の声が聞こえてくる。東京にいながら、数千 km離れた送信所から届く電波を受信することもできる。 現在ならば、受信専用の短波ラジオを購入し、自宅で海外放送を聴くために、行政当局の許可を受ける必要はない。 ところが、戦前の日本では事情が違っていた。 一般家庭のラジオ受信機は行...
私たちの身の回りには、電波を出すことを目的としていないのに、電磁的な雑音を発生させる機械が数多く存在する。 パソコン、テレビ、LED照明、スイッチング電源、モーター、インバーターなどが、その例である。 これらの機械は、内部で電流や電圧が変化することによって、周囲に電磁的な影響を与える。電源線や信号線を通じて伝わる雑音もあれば、空間に電磁波として放射される雑音もある。 たとえば、ある家庭で電気...
電波には国境がない。しかし、電波を利用する人間には法律がある。 日本の市民ラジオで、遠い外国の声が聞こえてきたとしよう。 相手は、その国の法令に従って無線局を運用している。こちらも日本国内で、技術基準に適合した市民ラジオ機を使用している。 このとき、外国局からの呼びかけに応答してよいのだろうか。 市民ラジオの愛好家であれば、遠距離から届く電波に心を動かされた経験があるかもしれない。普段は聞こ...
はじめに――0.5 Wの電波が問いかけるもの 山の上で、小さな無線機のスイッチを入れる。 アンテナを伸ばし、雑音の向こうに耳を澄ませる。しばらくすると、かすかな声が聞こえてくる。相手がどこにいるのか、最初は分からない。電波の伝わり方によっては、思いがけず遠方の人と交信できることもある。 日本の市民ラジオには、そのような楽しみがある。 スマートフォンなら、相手を指定して通話できる。インターネッ...
はじめに――小さなマークに込められた国家の判断 新しい無線機器を購入するとき、私たちは何を確認するだろうか。 価格、性能、使いやすさ、メーカーの評判、そして製品のデザイン。無線に詳しい人であれば、使用周波数や送信出力、通信方式にも関心を向けるだろう。 ところが、日本で無線機器を使用するときには、もう1つ重要な問題がある。 「技適マーク」である。 技適とは、一般に電波法に基づく技術基準適合証明...
はじめに――「電波を出してみたい」という小さな願い ある日、子どもが古いラジオを手にして、こんな質問をしたとする。 「ラジオは電波を受け取るんでしょう。だったら、自分でも電波を出せるの?」 大人はどう答えるだろうか。 「危ないからやめなさい」と言うかもしれない。「勝手に電波を出すと法律に違反することがある」と説明するかもしれない。あるいは、無線通信の仕組みを教え、安全な実験の方法を一緒に考え...
1.発明は、法律の許可を待たなければならないのか 新しい無線技術を発明した技術者がいるとしよう。 その技術者は、従来よりも少ない電力で遠くまで通信できる装置を開発した。あるいは、多数の無線機が互いに干渉しないように、自動的に周波数を選択する仕組みを考案したのかもしれない。 研究室での測定は成功した。 次の段階では、建物の外にアンテナを設置し、実際の都市環境で通信実験を行いたい。 ところが、こ...
はじめに――同じ無線機なのに、なぜ聞こえ方が変わるのか 特定小電力トランシーバー、通称「特小」を使っていると、不思議な経験をすることがある。 胸の前で無線機を持っていると、相手の声が途切れる。ところが、腕を伸ばして無線機を少し高く掲げると、急にはっきり聞こえてくる。右手から左手に持ち替えただけで、受信状態が変わることもある。 相手は同じ場所にいる。周波数も送信出力の設定も変えていない。それな...
私たちは、携帯電話を使うとき、電波の強さを気にすることがある。地下鉄の車内で通信が遅くなれば、電波が届きにくいのだろうと考える。山間部で通話が途切れれば、近くに基地局がないのかもしれないと思う。 ところが、携帯電話の通信品質を支える重要な条件には、もう1つ、日常生活ではほとんど意識されないものがある。 それは「時刻」である。 街の屋上や鉄塔に設置された携帯電話の基地局は、互いに極めて正確な時...
電波法制・行政法・法社会学・比較法学・無線工学から読み解く、特定小電力無線の歴史 はじめに――無線機の表示窓には、制度の歴史が残っている 古い特定小電力トランシーバーを調べていると、不思議な数字に出会う。 9ch、11ch、20ch、そして47ch。 いずれも、一般に「特小」と呼ばれる特定小電力無線の無線電話用設備に関係する数字である。 現在では47ch対応のアナログ特定小電力トランシーバー...
はじめに――仕事と趣味が同じ電波を使うとき 建設現場で、作業員が特定小電力トランシーバーを使って資材の搬入を指示している。その近くでは、無線愛好家が同じチャンネルを使って交信を楽しもうとしている。 あるいは、351 MHz帯のデジタル簡易無線登録局を使う配送業者と、山頂から遠方との交信を楽しむ人が、同じチャンネルを必要としている。 これらは想定上の場面だが、共用無線で生じ得る問題を表している。...
はじめに――歌い手の足元にあった一本の線 かつて、カラオケのマイクには長いコードが付いていた。 スナックの片隅で歌う人は、コードを足元に垂らし、ときには手首に巻き付けながら歌った。歌い終われば、隣の客へとマイクを手渡す。そのとき、コードが椅子の脚に絡まったり、テーブルの下を横切ったりすることもあった。 今日のカラオケボックスでは、その光景を見かける機会が少なくなった。 マイクは充電器に立てら...
これまでのはなし ――正しい判定が、正しい人間の理解を意味するとは限らない。 前編 はじめに――拾陸進教に、法律家になれなかった男が現れた これまで拾陸進教の歴史には、六人の重要な人物が登場してきた。 開祖・拾陸玄道。 円環と位相を説いた円山元。 固定小数点と余徳の思想を残した小島點市。 条件分岐と検証を教義へ持ち込んだ戸倉修。 四捨五入と仮桁の思想を提唱した半田五郎。 そして、基数の自由を...
前編 割り切りの女――江田真由子と拾陸進教「基数自由論争」 ――円は閉じる。πは終わらない。 はじめに――十六でなければならない理由 拾陸進教には、五人の重要な思想家がいる。 開祖・拾陸玄道。 円環と位相を説いた円山元。 固定小数点と余徳の教えを残した小島點市。 条件分岐と検証を教義へ持ち込んだ戸倉修。 そして、四捨五入と仮桁の思想を提唱した半田五郎である。 玄道は、Fの次に10があると説いた。...
前編 はじめに――半分に達した者は、進んだことになるのか 拾陸進教には、四人の重要な思想家がいる。 開祖・拾陸玄道。 円環と位相を説いた円山元。 固定小数点と余徳の教えを残した小島點市。 そして、条件分岐と検証を教義へ持ち込んだ戸倉修である。 玄道は、Fの次に10があることを説いた。 円山は、Fの次には0もあり、どちらになるかは数を収める器によって決まると説いた。 小島は、整数の間にも変化が...
夜更けの居間で、テレビのチャンネルを変える。 見慣れた番組が消え、次の瞬間、画面いっぱいに白と黒の細かな粒が現れる。無数の点が絶えず動き、スピーカーからは「ザーッ」という音が流れ出す。 かつて、テレビのある家庭では珍しくない光景だった。 誰かが「映らないね」と言う。別の誰かがアンテナの向きを気にする。つまみを回したり、チャンネルを切り替えたりするうちに、突然、人の顔や風景が浮かび上がることも...