同性婚があれば、健は恋人を罪に問う証言を断れた。
恋人の拓也が事件でうたがわれ、健は証人に呼ばれた。
健は、拓也が事件の夜に家へ帰った時間を聞かれた。
答えによっては、拓也が不利になる。
健は小声で「答えません」と言った。
裁判官は静かに「答えてください」と言った。
夫や妻なら、相手が罪に問われそうな証言は断れる。
離婚した元の夫や妻でも、断れる。
けれど男性どうしの健と拓也は、結婚できない。
だから健は、断れなかった。
26年間、毎日拓也の帰りを待ったのは健だった。
拓也が帰った時間を言わされたのも、健だった。
同性婚は『日本は同性愛に寛容な国だから、いらない』と言う人へ。LGBTの人を守る法律がどれだけあるかを、OECDが加盟国で比べたら、日本は下から2番目だった。本当に寛容な国なら、守る法律を拒む理由がない。
同性婚を認めない日本で、和彦は生まれた。
80年前の今日、憲法が公布された日だ。
母親は和彦を抱いて言った。
「新しい憲法で、結婚は親ではなくふたりが決める」
和彦も恋人の勇も男性で、結婚を決めた。
でも法律の夫婦は、男性と女性だけだ。
だからふたりは、届けを出しても夫婦になれない。
高等裁判所は、同性婚の裁判6つのうち5つで、
同性婚を認めない法律を憲法違反とした。
それでも最高裁の判決はまだで、法律もそのまま。
今日、和彦は80歳になった。
勇と暮らして、46年になる。
ふたりで決めても、和彦と勇は結婚できない。
同性婚がないのに、「いつでも結婚できるよ」。
恋人どうしの男性ふたりに、友だちが明るく言った。
「その気になれば、いつでも結婚できるよ」
友だちは、男性どうしも結婚できると思っていた。
ふたりは笑って、「ありがとう」とだけ返した。
たしかに条件を満たす大人の男女なら、
届けを出せばいつでも夫婦になれる。
日本では1日平均、約1,340組の男女が結婚する。
でも男性どうしは、いつ出しても夫婦になれない。
日本の法律で結婚できた男性どうしは、1組もいない。
ふたりは、10年前から「その気」だ。
同性婚ができないから、養子縁組で親子になった男性ふたりがいる。でも民法では、縁組で親子になった人どうしは、男女でも、親子をやめた後も結婚できない。『養子縁組で済む』どころか、親子になったその日に、ふたりが結婚できない理由がもう一つ増えた。
同性婚をふたりで待ったまま、博の恋人の誠が死んだ。
葬儀場の人が、霊柩車の助手席のドアを開けた。
「喪主さまは、こちらにお乗りください」
喪主は、ならわしで夫や妻がつとめることが多い。
でも博も誠も男性で、法律で夫婦になれない。
夫になれない博に、喪主の順番は回ってこなかった。
だから誠の弟が、泣きながら助手席に座った。
霊柩車が、長いクラクションを鳴らした。
見送る博は、車が角を曲がるまで頭を上げなかった。
誠が運転する車の助手席は、三十二年ずっと博だった。
誠が運ばれる霊柩車の助手席だけは、博ではなかった。
同性婚に反対なら、『同性だから』を使わずに、同性の二人の結婚を認めない理由を一つ言える?『子どもが産めない』は使えない。男女の結婚でも、法律は子どもを産む力を求めていないからだ。使える理由が出るまで、あなたの反対は『嫌だ』の一言と同じだ。
同性婚の投稿は、累計でのべ4,280万人の目に入った。10月はThreadsで70万、Xで210万。少しずつ、でも確実に広まっている。一度のバズで勝つ気はない。同性カップルが結婚できる日まで、やめないことで勝つ!
同性婚がなくて、達也は28年勤めた会社を辞めた。
達也と暮らす恋人の直樹が、病気で歩けなくなった。
直樹の靴下は、毎朝、達也がはかせている。
辞める前、介護の相談員が達也にやさしく言った。
「ご家族ですから、仕事を93日休めますよ」
でも法律で休めるのは、決まった家族だけだ。
男女の夫婦なら、結婚の届けがなくても休める。
結婚できない男性どうしは、休めると決まっていない。
会社のルールも、法律どおりの家族だけだった。
だから有給休暇が尽きた朝、達也は社員証を返した。
家族と呼ばれた達也に、93日の休みはなかった。
家族の介護と仕事のあいだで迷った日のことを、ここに書いていい。休めた人も、休めずに辞めた人も、休めるか調べただけの人も。
達也に93日がなかった理由は、法律の条文にある。育児・介護休業法は、家族の介護で会社を休める「介護休業」(通算93日まで)の対象に、「配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。以下同じ。)」を入れている。届けを出さずに夫婦として暮らす男女は、ここに入る。
同性のパートナーについては、内閣官房が2025年9月30日に公表した点検で、「含まれ得る」とされた33の法令に、この法律は入らなかった。休みのあいだのお金(介護休業給付金)を決める雇用保険法も同じだ。社内の決まりで配偶者と同じに扱う会社や、職員の介護休暇に入れた世田谷区などの役所もあるが、国の法律ではまだ決まっていない。
同性婚をめぐる6件の裁判は、最高裁判所の大法廷で審理中で、判決はまだ出ていない。
同性婚に反対の人へ。あなたは子どものころ、『好きな人ができても、法律で結婚できない』と思ったことがある?同性を好きな子は、今の法律のままなら本当にそうなる。反対の声が続くかぎり、その子たちは『結婚できない』と思ったまま大人になる。あなたの声も、その一つだ。
「同性婚は賛成。でも、ゲイとわざわざ言わなくても」
ゲイの男性が職場で「彼氏と映画を見た」と話すと、
男性の同僚がそう返すことがある。
その同僚も「彼女と映画を見た」と話す。
その話は「わざわざ」とは言われない。
ゲイの男性は「ゲイです」と言っていない。
同僚と同じく、恋人と映画を見たと話しただけだ。
同じ恋人の話なのに、結婚では差がつく。
同僚は、結婚の届けを出せば彼女と夫婦になれる。
日本には同性婚がない。だからゲイの男性は、
届けを出しても、彼氏とは夫婦になれない。
彼氏も彼女も、話も結婚も同じでいい。
同性婚は、間に合わなかった。夫婦のように暮らした男性ふたりの片方が亡くなり、死亡届は残された男性が書いた。葬儀社の担当者は、その男性のペン先が『夫または妻』の欄で止まるのを見た。最期までそばにいたその男性が、『いない』を選ぶしかなかった。
「同性婚には賛成。でも、息子がゲイだったら困る」
そう言う親の息子が、ゲイかもしれない。
親にゲイだと言えない息子は、この一言を聞いて、
ゲイであることが親を困らせる、と思ってしまう。
親が困る理由には、息子の結婚の心配もある。
ゲイの息子は、恋人の男性と、
法律の上で結婚できないからだ。
結婚できないのは、息子がゲイだからではない。
日本に、同性婚がまだないからだ。
だから、同性婚の法律ができれば、
息子も恋人の男性と結婚できる。
そうなれば、親が困る理由もひとつ減る。
同性婚は、息子を心配する親の味方だ。
同性婚のない日本で、20年前、恋人どうしだと言えずに、不動産屋に『ルームシェアです』と言って部屋を借りた男性ふたりがいる。今のふたりは、胸を張って恋人どうしだと言える。なのに法律の上では、ふたりはまだ、あの日の『ルームシェア』のままだ!
同性婚への反対コメントでは、この発信は止まらない!届いた反対の言い分は、迷っている人に向けた事実の答えに、一つずつ変えていく。実現させる本気は、誰にも負けない。止めたいなら、方法は一つだけ。この国が同性婚を認めることだ!
「同性婚がなくても、ゲイの男性は女性と結婚できる」
同性カップルが国を訴えた札幌の裁判で、
国はこれを理由に、差別ではないと主張した。
ゲイの男性が恋をする相手は、男性だ。
だから「女性となら結婚できる」は、
「恋できない人となら結婚できる」と同じ意味だ。
恋をしたことがある人なら、このつらさがわかる。
裁判所は、国のこの主張を認めなかった。
ゲイの男性が女性と結婚できても、
平等ではない、と裁判所は判断した。
ゲイの男性が、恋する男性と結婚できて、
はじめて男女の夫婦と平等になる。
同性婚は認めないのに、死刑囚の結婚は認める国がある。日本だ。死刑囚は、好きな相手が異性なら塀の中からでも結婚できる。税金を納めて法律を守る男性ふたりは、好きな相手が同性だから結婚できない。この国は、罪より性別を重く見ている!

